[Tips 05] 女性モデルさんとの打ち合わせ

[Tips 05] 女性モデルさんとの打ち合わせ

今回のテーマは、女性モデルさんとの打ち合わせについての話。

いろいろなモデルさんと話をすると、私にとって意外な事実が判明した。
割と一定数のカメラマンが、モデルさんと打ち合わせをしないというのだ。

打ち合わせと一口に言っても、内容も手段もいろいろあるだろう。
モデルをお願いする前の打ち合わせ。
撮影の説明をする打ち合わせ。
撮影日当日の、場合によっては初顔合わせとなる打ち合わせ。
メールやLINE、チャットなどでの打ち合わせ。
カフェや喫茶店などでの対面による打ち合わせ。
コロナ禍を経験した現代の新たな日常としての、ZoomやSkype、Meetなどのネット打ち合わせ。

いずれにしても、実際に撮影をする前に、何らかのコミュニケーションをするのは重要である。

ほとんどのカメラマンがメールないしはチャットツールのテキストベースのやりとりが多いと思う。
私もほとんどの場合はそうである。

そのコミュニケーションの中で、カメラマンは自我の欲望をぶつけるだけの一方的なコミュニケーションになっていないかどうか、常に意識的に配慮すべきである。
特にカメラマンとモデルが異性同士の場合、その配慮は十分すぎるほどでなければならない。

なのだが、意外にもそうではない人が多いようなのだ。

Akari

Akari

メールの書き方やコミュニケーション術については、すでに「[Tips 02] コンタクトから撮影までのコミュニケーション」や「Fuyu」で触れているので、ここでは割愛する。

「打ち合わせ」とは、いったい何だろうか、ということである。

事前に撮影日時と集合場所さえ伝えてあれば、当日に撮影しながら説明すればいいじゃないか。
打ち合わせなどという時間の設定は、お互いにとって無駄なだけだ。
プロでも仕事でも契約でもないんだから、そういう煩わしいものは不要で、もっと気軽でカジュアルに撮影すればいい。

と、思われているカメラマンもいるだろう。

それでも問題ないというモデルさんもいるだろう。
しかし、私がお相手させていただく女性モデルさんの多くは「これが初のモデル」という方が多い。
被写体経験のない人が、異性のカメラマンとテキストだけのやりとりを数回程度しただけで、何が起こるかわからないまま撮影当日を迎えるというのは、実に不安なことである。

ポートレイトのカメラマンの撮影は、モデルさんを安心・リラックスさせるところからスタートするという点で、プロもアマも区別はない、と私は思っている。
プロのモデルだって、撮影内容が不明瞭であれば不安に思うかもしれない。であれば、アマチュアのモデル、ましてや初の被写体経験となるモデルにとっては、なおのこと不安でならないはずだ。

もちろん、一方的に打ち合わせをしても何の意味もない。
どういった撮影・趣旨であるかを簡単にお伝えし、モデルさんの希望があれば、さらに深く話をするようにしている。

私の場合、以下のような打ち合わせ内容になることが多い。
むろん、モデルさんごとに違う内容になることもある。モデルに合わせた打ち合わせ内容になるのは、ごく自然な流れであろう。

  1. 1.撮影日時
  2. 2.撮影場所
  3. 3.希望する撮影シーン
  4. 4.衣装やメイクについて
  5. 5.撮影方法

1.や2.は「当然でしょ」というところである。
が、割と雑に決めている人も多いのではないだろうか。
たとえば「じゃあ次の日曜のお昼に渋谷でよろしくです」みたいな感じで。

私はしっかり月日曜日、時間、場所の明確なポイントを確認して決めている。
「それでは、11月11日(月)の午前11時に、横浜駅北改札の券売機の脇でお待ちしています。Gパンと白いTシャツ、カメラぶら下げてる人を目印にしてください」
といった感じでお伝えする。打ち合わせの決定事項は、しっかり最後に明確化しておかなければ、お互いに不安でもあるし、誤解したまま終わってしまう可能性もある。
うやむやにしたいために、打ち合わせは存在すると考える必要がある。

3.は、事前にどういう写真や被写体として表現したい・されたいかの希望を聞く。
内容はモデルによりさまざまで「カッコよく」「かわいく」「和服で」というざっくりしたものから「都会的なイメージで」という具体化した要望もある。

カメラマンによっては、カメラマンが撮影したい希望だけをモデルに一方的に依頼し、モデルの要望を聞かない、もしくは受け付けない、あるいはそもそもモデルの希望など存在しないかの思い込みをもった人もいるようだが、それは私の経験上は絶対的に間違っていると確信できる。
被写体は被写体として表現したいものが、たとえ不明瞭で漠然としていたとしても、かならずあるものだ。
「可愛く撮られたい」などもその一例である。
可愛く撮られたいと思っている被写体を、カメラマンのゴリ押しでクールに撮影するわけにはいかない。
モデルは矛盾を抱えたまま撮影の最初から最後までを経験することになり、納得できる作品づくりができるとは到底言えないだろう。

カメラマンとしては「俺が納得できる写真が撮れればいいし、モデルもそれで良いと言っている」と言えるかもしれない。
でもそれは、モデルがその不納得感を口にしないだけかもしれない。

こうしたものは、およそ感情的なものであり、特に応募によるモデルさんの場合は、撮影をお願いする側に回っている気持ちがあるため、カメラマンの撮影要求を一方的に飲み込みやすい。

そうしたエゴをモデルに押し付けないようにすることで、お互いが納得できる(場合によっては一定の妥協ができる)撮影と作品づくりが可能となると、私は信じている。
そのために、モデルが希望する撮影、つまり、自分がどう写りたいかを確認する。
そこから場所や衣装の話が決まっていくことも往々にしてあるため、この部分の打ち合わせ・コミュニケーションは必須であると考えている。

4.は、さきほどの3.からの派生で話をすることも多い。ただし順番的に先になることもある。
ここも3.と同様に、カメラマンの要望だけをぶつけてしまうことは、できる限り回避すべきだろう。

5.は、撮影時にポージングなどの指示をするので初モデルでも安心してください、ということも含めて、撮影時の様子がわかるような話をする。
またモデルが希望する撮影方法、たとえば撮影にはハイヒールを履いてくるので、なるべくこまめに休憩を取りたいという要望があれば、それを撮影の計画内にいれられるような配慮をすることもできる。

こうした打ち合わせでわかることは多々あり、モデルがカメラマンに伝えたいこともわかるし、カメラマンがモデルに伝えたいことも明確になる。
言葉にしなければわからない、あるいは暗黙的に、もしくは過去の自分の経験だけが先走った思い込みを解消させることができる。

それが、打ち合わせの真の目的である。

当然のことながら、いざ撮影となれば、打ち合わせ通りになるとは限らない。
しかし、それが打ち合わせをしなくていい理由にはならない。

打ち合わせを事前にしておくことで、撮影の現場で打ち合わせにない出来事やシチュエーションが発生したとしても、すぐに回避したり別の方法にすみやかに切り替えることができるはずだ。
たとえば打ち合わせに応じて、事前にロケハンやGoogleマップでの現地確認をすることになれば、休憩できるコンビニが撮影したい場所から信号1つ渡ればあるといったことも事前に把握できるかもしれない。

当たり前の話だが、打ち合わせをしなければ、打ち合わせをすることによって得られる知識が獲得できない。
打ち合わせというのは、そういう気づきを得るためのアクションだということを、常に考えておくべきだろう。

もちろん、モデルを安心させる「モデル・ファースト」の考え方があれば、いちいち「打ち合わせ打ち合わせ」と念仏のように唱えなくても、自然にモデルとの調整がつけられるのは、言うまでもない。

Fuyu

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